妊娠中に葉酸をとりすぎるとどんなデメリットがある?【専門家監修】

 専門家監修
公開日:2019/10/11
更新日:2019/11/05
妊娠中に葉酸をとりすぎるとどんなデメリットがある?【専門家監修】
監修
井関祥子先生
東京医科歯科大学医歯学総合研究科分子発生学分野教授/日本先天異常学会副理事長
監修
上田玲子先生
帝京科学大学教育人間学部教授 栄養学博士

この記事は、妊娠中に葉酸をとりすぎた場合のデメリットについて紹介しています。妊婦さんにとって大切な栄養素である「葉酸」。妊娠中には積極的にとることがすすめられますが、「どのぐらいの量とればいいの?」「とりすぎたらよくないの?」という心配をする妊婦さんもいるかもしれませんね。そこで、「必要な葉酸の量」や「どのぐらいまでとっていいか(上限)」「とりすぎるとどうなるのか」などについて専門家にお聞きしました。

葉酸をとると妊婦さんにどんな効果があるの?

葉酸は赤ちゃんの先天異常や貧血のリスクを減らします

葉酸は、ビタミンB群のひとつで、細胞分裂やDNAの合成などに欠かせない栄養素です。そのため、ママのおなかの中で胎児がどんどん細胞を増やし、成長していく時期には必須の栄養素といえます。妊娠前~妊娠初期に葉酸を多く摂取することで、胎児の先天異常のひとつである「神経管閉鎖障害」のリスクを減らせることがわかっています。

神経管閉鎖障害とは、脳や脊髄のもととなる神経管が正常に形成されないことで起こる障害をいい、無脳症や二分脊椎症などが起こります。
神経管閉鎖障害のリスクを減らすために、妊娠計画中から妊娠初期には、葉酸や、その他のビタミンなどを多く含む栄養バランスのよい食事をとることがすすめられます。

※生まれつき脊柱管にあるべき脊髄神経が背骨の外にあるため、さまざまな神経障害が起こる病気

葉酸には、新しい赤血球をつくり出す作用もあり、葉酸不足により赤血球に異常が起こり、悪性貧血(巨赤芽球性貧血)になるリスクがあります。妊娠中に葉酸が不足すると、ママが貧血になります。ママが貧血になると胎児に酸素や栄養を十分送れないので、胎児の健全な成長が損なわれる可能性があります。

「葉酸不足は、神経管や赤血球だけでなく、その時期にでき上がりつつあるからだの器官に異常が生じるという研究結果もあります。葉酸不足は母体を通じて胎児の全身に悪影響をおよぼす原因になりうるのです」(井関先生)

さらに、母乳は血液からつくられるため、産後の授乳期にも葉酸を積極的に摂取することで、母乳の質が向上することが期待できます。
妊娠を希望する時期から妊娠中、産後の授乳期まで、継続して葉酸を摂取することを心がけましょう

葉酸の摂取量は?どのぐらい必要なの?

妊娠の時期によって異なります

葉酸は、水溶性のビタミンであり、体内に蓄積されにくい特徴があります。また、推奨される摂取量が多いため、毎日コツコツととり続けることが必要です。推奨される摂取量の目安は、厚生労働省による「日本人の食事摂取基準」に示されており、時期によって異なります。
また、葉酸には食事からとる葉酸(食品に含まれる葉酸:ポリグルタミン酸)と、サプリメントや強化食品からとる合成葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)があります。

「日本人の食事摂取基準」は、5年ごとにさまざまな分野の専門家により検討・策定されており、来年度(2020年度)には、『日本人の食事摂取基準 2020年版』が使用される予定です。策定後の推奨量は以下のようになります。

【1日に摂取したい葉酸の推奨量】

・成人女性の基本摂取推奨量/240㎍(食事性葉酸)

・妊娠を希望(計画)している時期/基本量(240㎍:食事性葉酸)400㎍(サプリメントなどからとるプテロイルモノグルタミン酸)

・妊娠初期(~15週6日まで)/基本量(240㎍:食事性葉酸)400㎍(サプリメントなどからとるプテロイルモノグルタミン酸)

・妊娠中期(16週0日~27週6日)/基本量(240㎍:食事性葉酸)240㎍(食事性葉酸)→合計 480㎍(食事性葉酸)

・妊娠後期(28週0日~40週0日(~41週6日))/基本量(240㎍:食事性葉酸)240㎍(食事性葉酸)→合計 480㎍(食事性葉酸)

・授乳期/基本量(240㎍:食事性葉酸)100㎍(食事性葉酸) →合計 340㎍(食事性葉酸)

妊娠計画中~妊娠初期は、より多くの摂取がすすめられます

成人女性が1日に摂取したい葉酸の推奨量は240㎍ですが、妊娠中期以降は、それにプラスして240㎍の葉酸摂取(食事性葉酸)がすすめられます。食事から葉酸をしっかりとりましょう、ということで、妊娠中は、妊娠による母体の変化や赤ちゃんの成長のために、より多くの葉酸が必要になるためです。240㎍という量は、「これだけ追加して摂取すれば、母体の血液(赤血球)中の葉酸の量を適切にキープできた」という報告から定められました。

さらに、妊娠を希望(計画)している時期~妊娠初期(受胎前後)は、普段の食事からの基本量240㎍(食事性葉酸)では不足する可能性があるので、サプリメントや強化食品に含まれる葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)から400㎍摂取することが望まれています。

葉酸を摂取する量の上限を知りたい

「耐容上限量」が定められています

食事摂取基準(厚生労働省)により、1日に摂取する葉酸の耐容上限量は、妊娠していないときで900~1000㎍とされています。耐容上限量とは、「多くの人にとって、習慣的に摂取しても健康障害をもたらすリスクがないと考えられる、摂取量の上限となる値」のこと。つまり、この量(1000㎍)より多くの葉酸を習慣的にとり続けると、健康障害のリスクが高まると考えられます。この値は食事から摂取される食事性葉酸ではなく、サプリメントや強化食品に含まれる葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)の耐容上限量です。

「上限量を1000㎍としたのは、葉酸を日常的に1000㎍以上摂取していた人と、妊婦さんの赤ちゃんに影響があった例があるためです。しかし、過剰な葉酸のためか、バランスの悪い食生活のせいか、何が原因か全く明らかになっていません。ですから、あくまで念のために、これ以上とらないようにという基準が定められました」(井関先生)

妊娠中や授乳期については、耐容上限量が定められていませんが、妊娠していないとき(成人女性)の耐容上限量(900~1000㎍)を参考に、サプリメントや強化食品に含まれる葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)は適切な量を摂取することが大切です。

葉酸をとりすぎるとどんなデメリットがあるの?

とり過ぎると葉酸過敏症を起こすことが

葉酸は水溶性ビタミンで熱に弱く、調理の段階で半分は失われてしまいます。そのため、食事からとる場合は、耐容上限量を超えてとりすぎる心配はありません。

ただし、サプリメントから葉酸を摂取する場合は、過剰に摂取してしまうことで、発熱やじんましん、かゆみ、呼吸障害などの「葉酸過敏症」を起こす可能性があります。また、血液検査をしたときに貧血が数値にあらわれず、正しく診断できないことも。

葉酸を妊婦がとる場合の正しい摂取法は?

基本は食事からとり、足りない分はサプリメントで補足を

葉酸の摂取方法は、基本的には、なるべく多種類の食材を使った栄養バランスのよい食事からとることが望ましいのです。なぜなら、食事から葉酸を摂取した場合には過剰摂取による健康障害の心配がないからです。したがって妊娠中期、後期にはできるだけ食事から葉酸をとるように心がけましょう。

葉酸は、ブロッコリーやほうれん草、かぼちゃなどの緑黄色野菜や、いちご、マンゴー、オレンジなどの果物、納豆、あずきなどの豆類などに多く含まれています。調理によって失われる量が多く、体内に蓄積されにくいことを考え、毎日とり続けることが大切です。

妊娠を希望(計画)している時期~妊娠初期(受胎前後)の時期は、前述のとおり、通常より多くの葉酸摂取が望ましいため、基本の食事に加えてサプリメントや強化食品に含まれる葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)で補うことがすすめられます。

食品とサプリでは葉酸の吸収率が異なります

食事からとる葉酸と、サプリメントでとる葉酸とでは、体内での吸収率が異なります。食品に含まれる葉酸(ポリグルタミン酸)は、調理の段階で分解されたり、溶出したりすることで失われやすく、平均して50%ほどしか体内に吸収されません。一方、サプリメントなどによる合成葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)は、約85%と吸収率が良いため、有効に活用できます。

食事で摂取する場合、例えば葉酸を1000㎍摂取しようと思ったら、いちごなら中73~74粒、ほうれん草なら39~40株とる必要があります。食事から摂取できる葉酸の吸収率が約50%であることを考えると、こんなにたくさんの量を食べる必要があり、それを継続するのは大変です。そのため、食事から葉酸を「とりすぎること」はありません。

「一方で、サプリメントや強化食品では過剰摂取にならないよう注意が必要です。例えば、葉酸のサプリメント以外に、鉄分やビタミンのサプリメントもとっている場合、それらのサプリメントに葉酸が含まれていることもあり、その場合は過剰摂取になる可能性があります。1~2日とりすぎたとしても問題はありませんが、長期間にわたって過剰にとり続けることがないよう気をつけましょう」(上田先生)

文/出村真理子
協力/日本先天異常学会
参照文献/国立健康・栄養研究所 https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail652.html
日本人の食事摂取基準 2020年版(厚生労働省)
校正/主婦の友社校正室

監修
井関祥子先生
東京医科歯科大学医歯学総合研究科分子発生学分野教授/日本先天異常学会副理事長
監修
上田玲子先生
帝京科学大学教育人間学部教授 栄養学博士
栄養学博士・管理栄養士。小児栄養学の第一人者として活躍するかたわら、トランスコウプ総合研究所取締役として栄養コーチングの手法を開発。日本栄養改善学会評議員や日本小児栄養研究会運営委員なども務める。『はじめてママ&パパの離乳食』『離乳食大全科』(主婦の友社)など監修書多数。

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