世界のお産を救う。バリ島“ブミセハット国際助産院”で学んだこと/前編【産後ドゥーラ小松紀子の“子育てのヒント”Vol.5】

コラム
公開日:2019/05/31
更新日:2019/06/06
世界のお産を救う。バリ島“ブミセハット国際助産院”で学んだこと/前編【産後ドゥーラ小松紀子の“子育てのヒント”Vol.5】

バリ・ウブドに、どんな貧しい妊産婦へも無償で医療を提供している助産院があります。そこには世界じゅうから寄付が集まり、母子に優しい自然なお産や完全母乳育児をしていると聞き、いつか訪れてみたいと思っていました。いま世界じゅうで注目されている助産師、ロビン・リムさんが主宰するバリのブミセハット国際助産院で、今年4月に初の日本人向け研修プログラムが行われるということで、さっそく参加してきました。バリの豊かな自然や信仰の中で、出産や子育てへの愛あるサポートについてたっぷり学んだ4日間の内容をお届けします。(産後ドゥーラ 小松紀子)

現代のマザー・テレサ 助産師のロビン・リムさん

被災地で家がなくなってしまった産婦と家族や、貧困のために出産費用が払えない若い妊婦など、世界じゅうの厳しい状況下にいる人々のお産や医療や教育を支えている助産師のロビン・リムさん。インドネシアでは死亡原因の1位が病気ではなく、いまだに出産時の大量出血によるものであり、生まれた子どもの死亡率も高いといわれています。

それらを削減するため、ロビン・リムさんは1995年からブミセハットインターナショナル基金を立ち上げ、インドネシアやフィリピンなどで5つのクリニックを設立。世界の被災地で20年にわたり年中無休で無償医療を提供し続けています。

クリニックでは年間600人以上もの赤ちゃんが産声を上げ、9つの大災害では何万人もの被災者支援を提供しました。長年にわたる多大なる功績が認められ、2011年にはCNNヒーローオブザイヤー、2015年はフィリピンの大統領から表彰、2016年には一般社団法人Earth Companyからインパクトヒーロー賞の受賞歴も。国内外で活躍され、日本でも昨年ワークショップが開催されました。そんな憧れのロビンさんに会って直接お話を伺える夢のような4日間……ということで、ドキドキしながらバリへ飛び立ちました。

世界の妊産婦の駆け込み寺 ロビンさんのブミセハット国際助産院

今回訪れたバリ・ウブドのブミセハット国際助産院も、ロビンさんが設立した5つのクリニックの中の1つ。入院や運営などすべての費用は寄付でまかなわれています。

医療施設というと、薬品の臭いがしたり、医療器具や分娩台が無機質で冷たい感じがするのではと思いきや、白を基調とした清潔な部屋や広いヨガ道場には気持ちいい風が吹き抜け、池や木々の緑を身近に感じてリラックスできる心地いい時間が流れていました。それぞれのお産のタイミングによって自由な姿勢で出産できる、まるでヴィラのようなあたたかで穏やかな空間。歩くだけで安らいだ気持ちになります。

助産院のヨガ道場。入院した妊婦さんが受けるマタニティヨガもこちらで行われます。

被災地へすぐ出動できるよう、浄水フィルターや太陽光パネルや医療器具を入れた出産準備用品が衣装ケースに常備されていて、被災地テント内での急な出産もサポート。院内には専属の医師もいて診察や薬の処方をしたり、肌にふれるものはなるべくハーブや薬草などのナチュラルなものを使用したりと、さまざまな工夫が。安心してお産に臨める優しい雰囲気に包まれています。

前夜に出産されたママは3人いらしたそうで、写真はその中のお1人であるママ&赤ちゃん。家族や兄弟も全員立ち合って赤ちゃんとママを見守っていたそう。

強さと優しさにあふれたロビンさんのまなざしと手

しっかりとした知識や技術、エビデンスに基づき、被災地など過酷な状況下での経験を重ねながらプロフェッショナルとして成長されてきたロビンさん。ご自身もお子さんが8人いらっしゃるそう。何より印象深かったのは、それぞれひとりひとりのママや赤ちゃん、家族に向き合う、強くて優しいまなざしとあたたかな手。そして深い愛情のもとに、つねに自分の言葉や体を使って動いていること。「命が生まれ育つ神聖な現場にいる、出産や子育てを手伝う助産師やドゥーラの手は、神さまから贈られたいちばんたいせつなギフト。その手は神さまや大地とつながっています。いつも大事にして、いたわって、たくさん使って働いてください」。いつも妊婦さんの体のどこかに触れているロビンさんの手のあたたかさとその言葉が強く胸に刺さりました。

研修ではバリ式参拝や朝ヨガや食事も充実

4日間の研修プログラムでは、ブミセハット国際助産院見学をはじめ、そこから歩いて数分のところにある宿泊施設、ピースキッチンに滞在しました。ロビンさんの助産師サポートについての講義を受けたり、合間においしいバリごはんビュッフェや手作りスイーツをいただいたりと楽しいプログラムが満載でした。ちなみにこちらで頂いたバリごはんやスイーツ、ヘルシーなのはもちろんのこと、毎回どれもすごく美味しくて。入院中のママたちにも、スタッフやボランティアが毎日栄養たっぷりのメニューを手作りしているそうですよ。

研修中のビュッフェメニュー。ブラウンライスや魚カレー、テンペ、ハーブ入りオムレツ、ココナッツ入りライスプディング、ベリー入りパンケーキ、トロピカルフルーツがずらり。おやつにもドラゴンフルーツのゼリーやミニ揚げ春巻きなど、バリ島らしいヘルシーメニューが並びます。

バリ式参拝では、バリの正装の民族衣装をお借りして、ロータスの香りのお線香をたきながら、お供えしたお花を耳にさしたり聖水やお米を顔につけたり。バリの深い自然の中でより思考がシンプルになって五感が研ぎ澄まされていくのを感じました。

朝4時くらいから鶏や虫の声で自然に目が覚め、7時からテラスで朝ヨガ開始。産前産後にいいポーズ、腰痛に聞くポーズなど2人1組で行いました。日本で妊産婦さんたちに教えるためにみんな熱心に覚えています。

参加者は日本全国から助産師、ドゥーラが合計12名。ロビンさんの活動を3年間支援し、多数のクリニック建設を一緒に実現してきたアース・カンパニーや、ブミセハットジャパンのスタッフ・通訳の方々も一緒に研修をサポート。ロビンさんの充実した講義内容を日本語の同時通訳で聞くことができ、アットホームな雰囲気の中、熱いメンバーで過ごす時間はまるで部活の合宿状態でした。

年齢も住まいもバラバラながら、みんなすぐにうちとけ、お産やサポートのプロ集団はこんなにもオープンで人間力がすごいのかと、まだドゥーラ1年目の私としては、感心、感動しっぱなしでした。ときには、死産の赤ちゃんの出産エピソードを助産師さんたちが語ってくれて、みんなで号泣しながらシェアしました。

助産師とドゥーラそれぞれのサポートや声がけを学んだり、自由な姿勢で骨盤に負担のかからない出産方法や、緊急時のときの安全でスムーズな赤ちゃんの助産などさまざまなケースについて、助産師や妊婦やパパ役などを皆でロールプレイング。貴重で実践的な講義はずっと学んでいたいほどの充実した内容でした。

ロビンさんが「mother and baby は日本語でなんていうの?」と聞いたので、皆で「母子」と答えると、お母さんと子どもは切っても切れないかけがえのない存在で、それがちゃんとセットの1つの言葉として広く使われているなんて、ほんとに日本はすばらしい国ですね!と感激されていました。そのより深い意味は後半の胎盤の授業で深く知ることになるのですが……。自然なお産や母乳育児、胎盤についての授業は次回お届けします。

★産後ドゥーラ小松紀子さんのコラムは金曜日公開(不定期)です★

Profile
小松紀子
産後ドゥーラ
一般社団法人ドゥーラ協会認定産後ドゥーラ、松が丘助産院登録ドゥーラ。現在、東京都中野区、杉並区、港区、品川区、世田谷区の登録ドゥーラ。ベビーシッターや家庭教師、塾の講師を経験し、18年の出版社勤務を経て、ドイツに5年半駐在し、帰国。一児の母。体に優しい料理、整理収納、ハンドケア、傾聴が得意。英語、ドイツ語(少し)可。趣味は旅行、ベリーダンス、美術館巡り。

一般社団法人ドゥーラ協会 小松紀子一般社団法人ドゥーラ協会 公式サイト

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