帝王切開の“痛み”がつらいってホント!? いつまで術後の傷は痛む?【産婦人科医監修】

 専門家監修
公開日:2019/06/20
更新日:2019/06/25
帝王切開の“痛み”がつらいってホント!? いつまで術後の傷は痛む?【産婦人科医監修】
監修
小川隆吉先生
小川クリニック院長

帝王切開の術後の傷は、いつまで、どんなふうに痛んで、どんな過程を経て治っていくのでしょうか? 退院後に傷の痛みがつらいときについても、産婦人科医の小川隆吉先生に詳しく教えていただきました。 

帝王切開とは、どういった手術なのか知りたい

帝王切開とは、妊娠中の母体か赤ちゃんに何らかの問題が生じて、経腟分娩(通常のお産)が難しいと判断される場合に、麻酔をし、開腹手術で赤ちゃんを取り出す方法です。現在の日本では、約20%の妊婦さんが帝王切開で出産しています。

帝王切開には、予定帝王切開と緊急帝王切開があります。

予定帝王切開

骨盤位(さかご)や、胎盤が子宮の出口をふさいでいる前置胎盤など、通常の分娩を行うにはリスクがあると妊娠中に判断された場合に、あらかじめ出産日(手術日)を決めて行うことを予定帝王切開といいます。陣痛がくる前に行う必要があるため、一般的に妊娠37~38週以降に設定されることが多いです。

緊急帝王切開

通常の分娩の予定であっても、分娩中に赤ちゃんと母体の両方、あるいはどちらかに予期しなかった緊急事態が発生した場合に行われるのが緊急帝王切開。例えば、出産の前に胎盤が急にはがれてしまったり(胎盤早期剥離・たいばんそうきはくり)、赤ちゃんの心拍数が異常だったり(胎児機能不全・たいじきのうふぜん)、陣痛開始後に分娩の進行が止まってしまった場合などです。

原則として、帝王切開は、「経腟分娩では赤ちゃんを安全に産むのが難しい」と診断された場合に行われるものです。出産の痛みが怖いからと、帝王切開を希望しても、医学的に帝王切開にする必要性がないのに手術することはおすすめできません。どうしても痛みが怖いなら、無痛分娩を選ぶことを考えても。

帝王切開による傷の痛みはいつまで続くの?

帝王切開の手術の傷が完全に回復するには個人差があり、6ヶ月~1年ほどかかります。傷の回復の過程は、炎症期、増殖期、成熟期の3期に分かれます。

帝王切開後は、8日前後の入院が必要です。通常の分娩であれば5日前後の入院ですが、手術の傷の回復のため、帝王切開の場合は入院期間が長くなります。産後1ヶ月に母子健診があるので、そこでも傷の回復経過を確認します。

炎症期~かさぶたができるまで~

一般的に、傷の痛みは術後3~4日目までがもっとも強いといわれます。この期間を患部の「炎症期」と呼ばれ、皮膚が再生して傷口が閉じていくのですが、この際に皮膚に痛みや腫れが生じることがあります。

増殖期~かさぶたがとれて痒くなるまで~

「増殖期」は術後2週間くらいまでのこと。新しい細胞が増殖して傷になった部分を埋めていく期間です。強い痛みはありませんが、軽い痛みや痒み、皮膚の赤みなどが見られることがあります。

成熟期~傷あとが目立たなくなるまで~

3週間を過ぎたら「成熟期」に入り、6ヶ月~1年を目安に回復に向かいます。細胞の活動が落ち着いて痛みや痒みは徐々になくなり、傷あとも白く目立たなくなっていきます。ただ、まれに傷口に何らかの異常が起こった場合は、赤く盛り上がって目立つように残ってしまうこともあります。

帝王切開による痛みの原因は2つ

帝王切開後の痛みの原因には、2つあります。ひとつは開腹手術による傷あとの痛みで、もうひとつが子宮収縮による痛みです。

開腹手術による傷あとの痛み

帝王切開の手術は、麻酔をして、下腹部の皮膚、皮膚の下にある脂肪組織、筋膜、腹膜を切開し、子宮にたどりつきます。おなかを切開してから5分前後で、赤ちゃんが子宮から取り出されます。胎盤もとり出したら、切開部を縫合します。麻酔をかけてから1時間くらいで手術が終了します。

手術中は麻酔が効いているので痛みはありませんが、麻酔が切れたら痛みだします。

子宮収縮による痛み

赤ちゃんを取り出したあとの子宮収縮による痛みを「後陣痛(こうじんつう)」と呼びます。胎盤を出したあとに起こり、その後も子宮が元の大きさに戻るために繰り返し収縮します。帝王切開の場合は、陣痛を待たずに手術を行うことが多いので、後陣痛の痛みをより強く感じる傾向があります。また、開腹手術による傷が子宮にあるために痛みも強くなります。時間経過とともにだんだん弱くなりますが、産後しばらくは授乳のたびに感じることもあります。これは赤ちゃんが乳首を吸う刺激で、脳から分泌されるオキシトシンというホルモンが子宮の収縮を促すからです。

帝王切開による痛みがひどい!どんな対策があるの?

痛み止めの処方について

後陣痛は、子宮が元の大きさに戻ろうとしているときに起こる痛みですが、眠れないほど痛いときは医師に相談を。子宮の戻り具合に問題がなければ、内服薬の鎮痛剤が処方されます。

開腹手術後の傷の痛みには、いくつかの鎮痛方法があります。硬膜外麻酔(※1)で帝王切開をした場合は、術中に使用したカテーテルに鎮痛薬を投与して痛みをコントロールします(術後疼痛除去・じゅつごとうつうじょきょ)。痛みは徐々に治まりますが、痛いときは我慢せず、医師やスタッフに伝えましょう。カテーテルをはずしたあとは、内服薬、注射薬、座薬の痛み止めなどが処方されます。どれも母乳に影響しない薬剤が処方されます。手術の傷あと、後陣痛ともに日が経つにつれ落ち着いてきます。帝王切開の入院は8日前後。入院最終日の診察で異常がなければ退院できます。

※1 硬膜外麻酔 背骨の中にある脊髄周辺にカテーテルを入れ、手術時には麻酔薬、術後にはこのカテーテルを通じて鎮痛薬を注入して、痛みを和らげます。

テーピングについて

傷は力がかかることで悪化します。傷あとをきれいに治すため、抜糸が終わったら傷あとを医療用テープで保護し、乾燥や摩擦から守りましょう。しかし、医療用テープにかぶれてしまう人もいるので、使うときは医師に相談してください。

帝王切開後の生活ってどんな感じ?

入院期間は、経腟出産よりも少し長めで8日前後です。この期間で開腹手術の傷あとはかさぶたができ始めるくらいになっています。傷の痛みは、痛み止めを必要としなくなりますが、痛みの感じ方は個人差があるので、心配な人は退院時に医師に痛み止めを処方してもらいましょう。

退院後はいよいよ本格的に赤ちゃんのお世話が始まります。帝王切開の場合は、傷あとの痛みもまだ残っているので、育児や家事をすべてママひとりで行おうと頑張らないでください。おむつ替えや沐浴、赤ちゃんの衣類の洗濯などはパパでもできることです。母乳はママしか与えられませんが、ミルクの場合はパパにもお願いできますね。家事代行、食材やお弁当の宅配サービスなども上手に活用しましょう。

●術後1~3ヶ月くらいは動くたびに痛いので、傷をかばうように猫背になります。

●授乳は3時間おきが目安といいますが、最初は一度にたくさん飲めないので、少し飲んで、30分ほどでまたおなかが空いて飲む、の繰り返しになる場合も。ママはひとりで無理をしすぎないようにしましょう。

●ミルクの場合、慣れないうちは授乳そのものだけでなく、準備や後片づけなどにも手間取ります。家族で役割分担しましょう。

●おむつ替えもおなかの傷の負担になります。家族の協力が必要。

●抱っこをするときは傷が痛むので、授乳クッションなどを使うと少し楽になります。

●赤ちゃんを沐浴させるとき、お湯や着替えの準備、入浴、湯上がりのおへその消毒や着替えなど、一連の流れをひとりで行うのはたいへんです。おなかの痛みがあるうちは無理をせず、家族と協力して行いましょう。

仕事が忙しいパパや同居している家族などがいなくて、周りの協力を得にくい場合は、国のガイドラインによって市区町村が行っている「産後ケア事業」を活用してみても。主に助産師・保健師・看護師が行い、出産直後から産後4ヶ月を目安に受けることができます。

・宿泊型…病院や診療所などに宿泊しながらケアを受ける

・アウトリーチ型…担当者と日程調整して、自分の家に来てもらう

・デイサービス型…病院や診療所に行ってケアを受ける

構成・取材・文/白木紀子
校正/主婦の友社

出典 :いちばんよくわかる妊娠・出産※情報は掲載時のものです

監修
小川隆吉先生
小川クリニック院長
日本医科大学卒。都立築地産院産婦人科医長として勤務する傍ら、日本医科大学産婦人科講師を兼任。1995年小川クリニックを開設。医学博士、日本産婦人科学会専門医、母体保護法指定医。妊婦さんの疑問や悩みに真摯に応えてくれる、気さくで頼りになるドクターです。

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