離乳食で発疹(湿疹)が出たらアレルギー?病院へ行くべき症状は?【小児科医監修】


鳥海佳代子先生
とりうみこどもクリニック副院長
離乳食が始まると、食物アレルギーを気にするママがたくさんいます。とくにママがアレルギー体質だと、「赤ちゃんもアレルギーになるのでは?」と心配になりがち。離乳食でアレルギー症状が出たときの病院へ行く目安や、食物アレルギーを防ぐ方法を医師に聞きました。
目次
離乳食で発疹(湿疹)が出る原因は?
食後2時間以内なら食物アレルギーが疑われる
赤ちゃんに発疹(湿疹)ができる原因はいろいろありますが、離乳食を食べたあと2時間以内に症状が出る場合は、「食物アレルギー」の可能性があります。食物アレルギーは、特定の食べ物が体内に入ることによって、皮膚に発疹(じんましん・皮膚が赤くなる)やかゆみ、下痢や吐き気、呼吸の異常など、さまざまな症状が出る病気です。
ただし、赤ちゃんの肌はデリケートで、よだれや食べ物がついただけで赤くなることもあります。「離乳食を食べたら皮膚が赤くなった」からといって、ママやパパが食物アレルギーと決めつけず、きちんと医師の診断を受けることが大切です。
食物アレルギーが起こる仕組み
なぜ、食物アレルギーが起こるのでしょうか。
人には有害なものから体を守るシステムが備わっていいます。そのひとつが「免疫」。たとえば、あるウイルスに感染して病気になると、免疫細胞がそのウイルスをやっつける「抗体」をつくります。その後、同じウイルスに再び感染すると、免疫細胞がこれに気づき、ウイルスを撃退して病気を防ぐのです。ところが、この免疫システムは、無害なものに過剰に反応してしまうことがあります。食物アレルギーは、体に無害な食べ物を有害と判断し、過敏に反応する状態をいいます。
赤ちゃんはまだ、消化酵素の分泌が不十分で、小腸の消化・吸収能力も未熟です。そのため、体に入った食物がうまく消化されずに有害なものと見なされ、抗体ができてしまうことがあるのです。
アレルゲンは皮膚からも侵入する
また、食ベ物が体に入るのは食事からとは限りません。アレルギーの原因となりやすい卵、牛乳、小麦など(アレルゲン)は、たいていどこの家庭にもあるものですが、これらの食品の成分が空中に浮遊して、それを吸い込んだり、荒れた肌から体内に入ったりすると、いつのまにか抗体ができていることがあります。健康な皮膚は異物の侵入を防ぐバリア機能があるので、食べ物の成分を吸収することはありません。
ところが、荒れていたり発疹(湿疹)が出ていたりすると、バリア機能が働かず、食物成分が吸収されて抗体ができやすくなります。そうなると次に体に入ったときに、アレルギー症状が出てしまうのです。
つまり、アレルゲンが体に入るルートは食べるだけでなく、吸い込んだり、皮膚から吸収されたりする場合もあるということです。
離乳食で発疹(湿疹)が出たときの対処法
発疹(湿疹)が出て、強くかゆがっているときは、冷たくしぼったタオルを当ててあげるとかゆみが緩和されます。また、汗や汚れを取り、皮膚を清潔に保つことも大切です。おふろはぬるめに設定するか、シャワーにし、泡立てた石けんで、やさしく洗ってあげましょう。
離乳食で発疹(湿疹)が出たときの受診の目安
食物アレルギーでは、食後2時間以内に症状が出てくる「即時型」というタイプが一般的です。はじめて食べさせてみて、食後2時間症状が出なければ、まず問題ないでしょう。
離乳食を食べたあと、2時間以内に症状が出たときには、軽症なのか重症なのかを見きわめる必要があります。急激に悪化する症状は、アナフィキラシーショックといって、命にかかわることがあります。次のような症状が見られたときはすぐに受診しましょう。
・発疹(かゆみ・赤み)が全身に広がり、赤ちゃんの機嫌が悪くなった
・顔色が悪くぐったりしている
・声がかすれるような激しいせき込み
・呼吸が速く、息が苦しそう
・繰り返し吐き続ける、激しくおなかを痛がる
「おかしい」と思ったらすぐ対応できるよう、はじめての食品を食べさせるのは病院に駆け込める日中の時間帯にするといいですね。
一方、部分的な皮膚症状だけで、数時間で治まった場合はすぐに受診しなくてもよいでしょう。ただし、いったん治まったのに再び症状が出たり、症状が出たり治まったりを2~3日繰り返すこともあるので、早めに受診して診断を受けたほうが安心です。
離乳食でアレルギーが出やすい食材
食物アレルギーの原因は、食品に含まれるたんぱく質です。理論的にはどんな食品でもアレルギーを起こす可能性があります。離乳食によく使う食品で食物アレルギーが出やすいのは、卵、牛乳、小麦粉です。これらは3大アレルゲンともいわれ、とくに注意が必要です。また、果物を離乳食に取り入れることがありますが、りんご、なし、もも、さくらんぼ、いちごなどのバラ科の果物も、アレルギーの原因食品になることがあります。
離乳食でみられるアレルギーの症状
食物アレルギーでは、さまざまな症状が出ます。
最も多いのは皮膚の赤みやかゆみ。そのほか
唇や舌のはれ
くしゃみ
鼻水・鼻詰まり
腹痛
吐きけ
下痢
などの症状が出ることもあります。
すべての症状が出るわけではなく、食べた量や子どもの体調によって異なります。これらは比較的軽症で、自然に治まることもあります。呼吸がゼーゼーする、顔色が悪い、息が苦しそうなどアナフィキラシーショックを起こしている場合は、できるだけ早く受診することが重要です。
離乳食でアレルギー反応が出るのはいつ?
離乳食を食べてすぐから、2時間以内にアレルギー反応が出ることが多いのですが、なかには6~8時間後、1~2日後に出ることもあります。反応が出るまでに時間がかかっている場合は、原因食品を見きわめるのが難しくなります。
離乳食でアレルギーを防ぐための注意点
十分加熱して、小さじ1杯から与える
離乳食はおかゆから始めることが多く、その後、にんじん、かぼちゃなどの野菜類、豆腐や卵黄などのたんぱく質(源)と進めていきます。ひとつの食品に慣れてから次の食品に移るようにしましょう。
はじめての食品を与えるときは、赤ちゃんの体調のいいときを選び、新鮮なものを十分加熱して、小さじ1杯から与えます。ほとんどの食品は加熱することでたんぱく質成分が吸収されやすい形になり、免疫システムが「有害な食べ物」と誤解することを減らせます。野菜類や肉、魚はもちろん、大人は生で食べる果物も、はじめて食べさせるときには加熱しましょう。
しっかりスキンケアをする
発疹(湿疹)などの肌のトラブルがあると、そこからアレルゲンが入り、抗体をつくることがわかってきました。また、赤ちゃんの肌を保湿して、デリケートな肌を刺激から守ってあげることでアレルギーを予防できることもわかってきました。
食事の前後は口のまわりに保湿剤を塗る、朝晩体をきれいにふいて保湿剤を塗るなど、スキンケアをしっかり行いましょう。
食べさせる時期は遅くしない
かつては「食物アレルギーが心配される赤ちゃんに、卵や牛乳を与えるのは、できるだけ遅くするのがいい」とされていました。ところが最近、これに反する研究が発表され、考え方が大きく変わってきています。
●ピーナッツアレルギー
アメリカのピーナッツアレルギーの研究です。アトピー性皮膚炎や卵アレルギーのある乳児に、乳児期からピーナッツを含む食品を食べさせると、まったくピーナッツを食べさせなかった子よりも、5歳の時点でピーナッツアレルギーの発症が少なかったのです。従来の「ピーナッツアレルギー予防のためには、乳児にピーナッツを与えないほうがよい」という考えとは逆の結果でした。
●卵アレルギー
日本の成育医療研究センターの研究です。固ゆで卵の粉末を生後6ヶ月から食べさせたグループと食べさせなかったグループで比較したところ、1歳の時点での卵アレルギーの発症率は、卵を食べたグループのほうが8割も少なくなっていました。
食べさせる時期を遅らせないほうが食物アレルギーが出にくいとはっきりわかっているのは、今のところはピーナッツと卵だけ。ほかの食品で同じような結果になるかどうか、現時点ではわかりません。ただ、「アレルギー予防のために特定の食品を食べさせなかったり、食べさせる時期を遅らせたりする必要はない」というのがアレルギー専門医の共通認識になっています。授乳や離乳についての国の考え方を示す『授乳・離乳の支援ガイド(改訂)』(2019年3月発布)では、次のように明記されています。
「食物アレルギーの発症を心配して、離乳の開始や特定の食物の摂取開始を遅らせても、食物アレルギーの予防効果があるという科学的根拠はないことから、生後5~6ヶ月から離乳を始めるように情報提供を行う」
食物アレルギーがわかっている場合は
加熱して小さじ1杯から、スキンケアをしっかり、食べさせる時期を遅らせないというのは、すべて予防の話です。治療法ではありません。
すでに食物アレルギーを発症していたり、医師に食事療法を指示されたりしている場合は、絶対に自己判断で食べさせないこと。ときには命にかかわることもあるので、きちんと医師の指示に従いましょう。

鳥海佳代子先生
とりうみこどもクリニック副院長
とりうみこどもクリニック
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