こ、これは!? シュワ~っと溶ける新食感!中東のお菓子“ハルヴァ”って?【旅するパティシエ・世界の子どもおやつ】

 専門家監修
公開日:2019/07/17
こ、これは!? シュワ~っと溶ける新食感!中東のお菓子“ハルヴァ”って?【旅するパティシエ・世界の子どもおやつ】
監修
鈴木 文
旅するパティシエ

旅するパティシエが贈る世界の子どもおやつ、3回目のテーマは中東を代表するお菓子“ハルヴァ”です。世界中に数百種類ものバリエーションが存在しているという“ハルヴァ”は、壮大な歴史を持ち、文化も民族も超えて世界中に広まったおやつ。その背景にあるストーリーとともに、レシピをご紹介します。

世界のおやつのルーツは中東にあり!

こんにちは。旅するパティシエこと、鈴木文です。
今回は、おやつをめぐる旅の中で、とりわけ重要な意味があった地域=中東の郷土菓子についてお話ししたいと思います。

世界中にはいろいろなお菓子がありますが、そのルーツをたどっていくと、中東にたどりつくことが少なくありません。そのため中東は、世界の郷土菓子をめぐる旅の中で、私がどうしても行ってみたい地域でもありました。

エルサレムのユダヤ人地区

ご存じの通り、中東は宗教的にも民族的にも複雑な歴史を持ち、今なお戦争や紛争のまっただ中にある地域が広く存在しています。旅のルートから外すべき?……でも、他の国々で触れたお菓子のルーツを、現地で、この目で見てみたい!
迷いに迷い、考え抜き、いくつかのルールを決めてヨーロッパから中東へと渡りました。訪れた国は、イスラエルです。

【イスラエルの基礎情報】

◆国名:イスラエル国(State of Israel)
◆首都:エルサレム
※1 日本を含め国際的には認められていない。
◆面積:2.2万平方キロメートル(日本の四国程度)
※2 数字はイスラエルが併合した東エルサレム及びゴラン高原を含むが,右併合は日本を含め国際的には承認されていない。
◆人口:約868万人(2017年5月 イスラエル中央統計局)
◆言語:ヘブライ語,アラビア語
◆宗教:ユダヤ教(75.0%),イスラム教(17.5%),キリスト教(2%),ドルーズ(1.6%)(2014年 イスラエル中央統計局)
※出典:外務省

エルサレムの旧市街にある、イスラム教徒地区へ

実際に訪れてみると、機関銃を持った警官たちが街中に配備されていて、ピリピリとした緊張感はありますが、治安は思ったよりも落ち着いた印象。

東エルサレムの旧市街には、特に驚きました。イスラエルとパレスチナ自治政府との領有権問題に揺れ続けている地区であるにも関わらず、とってもお菓子屋さんが多いのです。親子3代にわたる家族経営の店があったり、親戚同士で同じ屋号の店を何軒か構えていることもあるのだとか。

そして、私が特にこの地で出会いたかった郷土菓子……それがこの“ハルヴァ”!

いくつもの店先に、さまざまな形、さまざまな材料を使った“ハルヴァ”が、ブロック塀のように積まれているではありませんか! これこそまさに、私が現地で見たみたかった光景でした。

定義がない!? 穀物やスパイスを使ったおやつ“ハルヴァ”とは?

“ハルヴァ”は、東はバングラデシュから西はモロッコまでと、非常に広い地域で愛されている、伝統的なお菓子です。穀物やナッツ類に油脂と砂糖を加えて作るのですが、熱した砂糖のシロップと穀物や油脂を混ぜる際に空気をたっぷり含ませることで、口に入れるとシュワっと溶ける独特の食感が生まれます。

“ハルヴァ”という名前は、もともとアラビア語の“ハルワ”が語源といわれていて、冠婚葬祭にまつわる様々な行事で重要な役割を果たすことが多いよう。

Halawa, Alva, Haleweh, Halava, Helava, Helva, XAjIBA

こんな風に、さまざまな言語に「ハルヴァ」「ハルワ」という単語が存在しています。

起源は古代メソポタミアというから、なんとも壮大な歴史! 世界には数百種類の“ハルヴァ”があるとされていて、特にイスラエルは移民国家なので、さまざまな地域から来た人々が作る“ハルヴァ”が楽しめます。たとえばユダヤ人が作るものとアラブ人が作るものはちょっと違うのですが、でもどちらも“ハルヴァ”。

イスラム教徒地区では、いたるところで“ハルヴァ”を量り売りされている様子が見られました

実は南米アルゼンチンのブエノスアイレスを旅していたときに、現地の男の子から教わったピーナッツバターのナッツバー=マンテコールというお菓子があるのですが、なんとそのルーツも“ハルヴァ”にあります。大陸も文化も超えて、世界各地に広まっていった“ハルヴァ”。その長い歴史が自分の中でつながり、目の前にあるだなんて! 聖地エルサレムで小躍りしそうになるほど、感激した瞬間でした。

アルゼンチンのおやつ、ピーナッツバターでできたマンテコール

さて、イスラエルで最も一般的なのは、濃厚な練りゴマ(タヒーナ)で作るもの。さらにチョコレートやナッツが加えられているものもあります。口に入れるとほろっと崩れ、固まっていた油脂が溶けてシュワワ~っと溶けるのがたまらない美味しさ♡

種類が豊富で、定義があるようでない、きっちりとしたレシピにもとらわれない。だからこそ“ハルヴァ”は、作り手の創造性が刺激される面白いお菓子でもあります。

教えてくれたのは、人なつっこいムスリムの人たち

こうなったら、なんとしてでも現地の人たちから習いたい! そう思って、中東のパティスリーを覗いてみました。最初は恐る恐る、「材料は?」などと質問していたら、厨房でお菓子作りをおしえてもらえることに。やった~!

こちらは“ハルヴァ”ではなく、きな粉のような味わいの“グレイヴ”というお菓子

悩みぬいた上で決めた中東の旅でしたが、世界のおやつの源が売られている様子を見ることができ、しかも現地で教わることができた感動は忘れがたい体験になりました。

【レシピ】ほろっとくずれてシュワっと溶ける“ハルヴァ”を作ろう

現地の“ハルヴァ”は、ゴマペーストで作ったものが多かったのですが、ここでは子どもが好きなピーナッツ風味にアレンジ。1週間くらいは日持ちするので「ちょっとエレルギーが必要」なときにカットして食べられます。口に入れた時のホロホロ、シュワ~な舌ざわりは格別♡シロップを作る工程以外は、やけどの心配もないので、子どもも一緒にお菓子作りを楽しめるはず! 

材料

(横10cm✕縦15cm✕高さ5cmのプラスチック保存容器1個分)

※このレシピは、幼児食が進んだ5~6歳以上の子どもを対象にしています。
※固さや味付け、材料の大きさなどを大人がチェックしてから食べさせるようにしましょう。
※事前に材料をチェックし、アレルギーを持つ食材が入っていないか十分気を付けてください。

◆国産ピーナッツペースト(無糖・無塩)……400g
◆海塩……1g(ひとつまみ程度)
◆ナツメグパウダー……1.25g
◆シナモンパウダー……1.25g
◆きび砂糖……220g
◆水……80g
◆好みのナッツ……50g(今回はピスタチオ、アーモンド、くるみを使用)
◆ローズのドライハーブ(飾り用/好みの量)

準備
・ナッツ類をオーブンでローストしておきます。
・プラスチック製の保存容器に食品用ラップを敷いておきます。

作り方

①容器にナッツを並べる
ラップを敷いたプラスチック製の保存容器に、あらかじめローストしたナッツを敷き詰めます。

②シロップを作る
水ときび砂糖を鍋に入れて弱火で120℃まで加熱し、シロップを作ります。製菓用の温度計が自宅にない場合は、沸騰した後、はちみつのようなとろみが出てきたのを目安に火を切りましょう。熱伝導率の良い銅の鍋がベストですが、アルミニウムや鉄製の鍋でもOK。

③ペーストとスパイス類を混ぜ合わせる
ボウルにピーナッツペースト、海塩、ナツメグパウダー、シナモンパウダーを入れて泡立て器で混ぜ合わせます。

④ペーストとシロップを混ぜ合わせる
③に②のシロップを加えながら、泡立て器でさらにかき混ぜます。

泡立て器でしっかりかき混ぜると、空気を含んで少し白っぽくなります。

⑤容器に移す
しっかりと空気を含ませたら、ナッツを並べた①の容器にすばやく移します。

⑥冷まして固める
表面を平らにし、そのまま室温で冷まします。

⑦完成!

レシピ撮影/佐山裕子(主婦の友社写真室)
現地の写真提供/鈴木英嗣
取材・文/雨宮あかり

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監修
鈴木 文
旅するパティシエ
高校生の頃にお菓子作りをスタート。立教大学卒業後、株式会社バーニーズジャパンを経てパティシエに転身。ペニンシュラホテルのフレンチレストランやパティスリーで修行を積んだ後、会員制レストランでシェフパティシエに就任。退職後、世界各地でお菓子を作る旅に出る。50ヵ国以上を訪れ、500種類以上の郷土菓子と出会った経験をもとに、お菓子ブランド「世界のおやつ」を主宰。2018年に長男を出産。企業や自治体、大使館などの商品開発や店舗プロデュース、観光プロモーションなどにも携わりながら、“旅するパティシエ”として、創作菓子とともに、旅とお菓子のストーリーを届けている。
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