咳止めの処方薬の種類と使い方【小児科医監修】

 専門家監修
公開日:2019/03/06
更新日:2019/03/22
咳止めの処方薬の種類と使い方【小児科医監修】
監修
鳥海佳代子先生
とりうみこどもクリニック副院長

この記事では、子供の咳止め薬について解説しています。赤ちゃんや小さな子供は、咳が続いていると、それだけで体力を消耗してしまいます。咳で病院を受診すると、どんな薬が処方されるのでしょうか。咳が出ているときの処方薬にはさまざまな種類があるので、それぞれの薬の特徴や副作用について知っておきましょう。

咳はむやみに止めないのが原則

咳は、体に異物が入ったときの防御反応のひとつですから、むやみに止めないことが原則です。コンコンと乾いた咳が軽く出るだけで、ほかに発熱などの症状がなく、夜咳込んで眠れないなど日常生活に困ることがなければ、家で様子を見ていいでしょう。

「ヒューヒュー」「ゼーゼー」と胸から音が聞こえるとき、痰がからんだような湿った咳に変わったとき、夜中や明け方に咳込んで起きてしまうとき、普通の風邪とは思えないような変わった咳が出ているときなど、気になるときは、まず小児科を受診しましょう。市販の咳止め薬やシロップなどもありますが、市販薬には症状に効く成分が十分に入っていなかったり、不必要な成分が含まれていたりすることがあるので、長く飲ませるのはおすすめできません。受診のタイミングを逃さないようにして、医療機関を受診し、症状に合ったものを処方してもらって飲ませることが大切です。

咳止めの処方薬を飲ませる時期は?

医療機関では、激しい咳が出てよく眠れないなど、赤ちゃんや子供がつらそうなときに、症状を確認して咳止めの薬を処方することがあります。何歳から飲ませるなどと決まっているわけではなく、症状と咳のつらさをよくみながら医師が処方します。

咳止めの処方薬は、病気そのものを治すわけではありません。対症療法として使われる薬ですから、基本的には咳が治まり、赤ちゃんや子供がラクになってきたら、それ以上使わなくてもいいものです。医療機関で咳止めの薬を処方してもらったときは、飲みきったほうがよいのかを確認するとよいでしょう。

咳が出ているときに処方される薬の種類

咳が出ているとき、医療機関で処方される薬には、次のようなものがあります。

鎮咳薬(ちんがいやく)

異物や冷たい空気がのどから気道に入ると、その刺激が脳の延髄にある「呼吸中枢」に伝わります。すると、異物を体外に出そうとする生理的な反射が起こり、咳が出ます。
また、ウイルス感染などにより、咽頭、喉頭、気管支などの気道に炎症が起きたときも、咳が出ます。これは、気道の炎症によって気道の粘膜からの分泌物が増え、刺激となるからです。
鎮咳薬は、咳反射をつかさどる呼吸中枢に作用し、咳をしずめる薬です。

去痰薬(きょたんやく)

風邪などが原因で気道に炎症が起こると、気道の粘膜からの分泌物が増えて痰(たん)が出ます。去痰薬は、痰の粘りをとってサラサラにしたり、気道の粘膜の繊毛(じゅうもう・細かな毛)の働きをよくしたりして、痰を出しやすくする薬です。

気管支拡張薬

風邪などが原因で気管支が炎症を起こすと、気管支を取り囲んでいる筋肉が収縮したり、粘膜がむくんだりして、気管支が狭くなります。気管支は空気の通り道なので、狭くなると呼吸が苦しくなります。狭くなった気管支を広げて、呼吸がラクになるようにするのが、気管支拡張薬です。

解熱鎮痛薬(いわゆる「熱さまし」の薬)

熱を伴う咳がある場合には、解熱鎮痛薬も処方されることがあります。とくに赤ちゃんは、体を調節する中枢神経の働きが未熟なため、大人に比べて熱が出ると、一気に高くなりがちです。解熱鎮痛薬は、体温を調節する脳の中枢神経に作用して、一時的に熱を下げたり、痛みを抑えたりするように働く薬です。

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咳が出ているときの薬の効果。どんな症状に効く?

よく乳幼児に処方される、咳が出ているときの処方薬の効果はどのようなものでしょうか。薬の名前には、製薬会社がつけた「商品名」、薬効を示す化合物を一般的な名前で示した「一般名」などがあり、ここでは商品名で紹介します。処方せんには、商品名で書かれている場合と一般名で書かれている場合があり、最近では一般名で記すことも多くなりました。

鎮咳薬

大人でも咳が続くとつらいですが、体力のない赤ちゃんや小さな子供は、よく眠れないなどで、なおさら消耗が激しくなります。すると、抵抗力が低下し、咳の原因となった病気の回復も遅れてしまいます。そこで、ひどい咳が出ているときには、咳をしずめ、少しでも体力を回復させるために鎮咳薬を使います。

メジコン……呼吸中枢に働きかけて、咳をしずめます。赤ちゃんには粉薬またはシロップで処方されます。粉薬は水に溶けやすいですが苦味があります。

アスベリン……呼吸中枢に作用して咳をしずめ、気道の粘膜の分泌物を促して、痰を出しやすくする働きもあります。尿が赤くなることがありますが、心配いりません。

ブロチン……気管支の働きを促進し、咳をしずめる薬。また、気道の粘膜の分泌物を増やし、痰を出しやすくする働きもあります。甘味のあるシロップです。

去痰薬

赤ちゃんや小さな子供は大人より気管支が細いため、痰がつまりやすく、痰を出す力も弱いもの。痰がからみ、呼吸をするたびに、ゼロゼロと音が聞こえるようなときに去痰薬を使うと、痰が出やすくなってラクになります。
乳幼児によく処方される去痰薬には次のようなものがあります。

プルスマリンA……気管支や肺の粘膜分泌を促進し、繊毛運動の働きをよくして痰を出しやすくします。気管支炎、ぜんそくなどに処方。

ムコサール……気管支や肺の粘膜からの分泌物を促し、絨毛運動を活発にします。痰の粘り気をとって切れをよくします。

ムコダイン……気管支の粘膜の荒れを元に戻して、咳をしずめます。また、痰の切れをよくし、鼻づまりを改善する作用も。

ビソルボン……粘り気のある痰をサラサラにし、繊毛運動を促して出しやすくし、呼吸をラクにします。

気管支拡張薬

気管支拡張薬は、交感神経を刺激することで気管支を広げ、咳をしずめます。乳幼児では主に、「β₂刺激薬」という薬が使われます。気管支の炎症が強く、咳がひどいときに処方されます。鎮咳薬や去痰薬と併用することもあります。
乳幼児によく処方される気管支拡張薬には次のようなものがあります。

メプチン……心臓を刺激せず、交感神経を刺激して気管支を広げます。ぜんそくや気管支炎に使われます。

アトック……気道のむくみを抑え、気管支の筋肉の緊張をゆるめて気管支を広げます。抗アレルギー作用があり、ぜんそくによく使われます。

ホクナリン……ぜんそくや気管支炎のとき、狭くなった気管支を広げます。

ホクナリンテープ……皮膚に貼るテープタイプの薬です。長時間効果が持続するので、夜間や明け方の咳を抑えることができます。ただし、貼った部分に赤みやかゆみが出ることがあります。

解熱鎮痛薬

解熱鎮痛薬は、熱を一時的に下げて、病気と闘うための体力を回復させるものと考えましょう。使うのは、38.5度以上の熱があり、眠りづらそうにしている場合や、食欲がなく水分もあまりとれない場合、ぐったりしている場合などです。熱があっても、比較的元気があり、水分もとれるようなら、使う必要がないことも多いのです。
乳幼児によく処方される解熱鎮痛薬には次のようなものがあります。

アルピニー坐薬・アンヒバ坐薬……(一般名が)アセトアミノフェンという薬剤の坐薬です。

カロナール……(一般名が)アセトアミノフェンという薬剤で、シロップ、粉薬、錠剤、坐薬の4タイプがあります。粉薬は飲んだ直後は甘く感じますが、やがて苦くなります。

咳が出ているときに使う薬の注意点

鎮咳薬・去痰薬・気管支拡張薬

薬を飲んでいるからと安心せずに

咳は病気の度合いをわかりやすく表してくれるものでもあります。鎮咳薬や去痰薬、気管支拡張薬を飲んでいるからといって安心せず、どんな様子でどんな咳をしているか、よく観察しましょう。

コンコンという乾いた咳から、ゴホゴホ、ゼロゼロした湿った咳に変わったときや、胸から音がし始めたときなどは、病状が悪化している可能性があります。また、ケンケンというかすれた咳はクループ症候群などが疑われることがあるので、このようなときは医療機関を受診しましょう。
頻繁に痰がからむようになったり、咳がなかなか治まらなかったりするときも、再度受診したほうがよいでしょう。

気管支拡張薬は副作用に注意

気管支拡張薬は、まれに動悸や手の震えなどの副作用が現れることがあります。その場合は、服用をやめて医師に相談しましょう。

解熱鎮痛薬

病原体との戦いがまだ収まっていないときや勢いが強いときは、いったん下がった熱が再度上がることはよくあります。連続して使用するときは、医師に指示された使用間隔を守って使用しましょう。また、坐薬やシロップでは使用する量を守ることも大切です。処方されたら、医師や薬剤師に使い方をしっかり確認しましょう。

取材・文/小沢明子

監修
鳥海佳代子先生
とりうみこどもクリニック副院長
島根大学医学部卒業。島根県や千葉県の小児科に勤務後、2010年に夫とともにとりうみこどもクリニックをオープンさせる。カラフルな診療着とおおらかでやさしい人柄が、患者さん親子に人気のママドクター。
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